2019年11月25日月曜日

2019.11.25

講師:
横浜国立大学
大学院都市イノベーション研究院
高見沢 実 教授

2020年代に向けた大学と地域
〜羽沢横浜国大駅開業を前に〜




2004年の国立大学の法人化を受けて、一層着目されることの多くなった、大学と地域の連携について考える。2019年11月30日、相模鉄道とJR埼京線の直通運転が開始する。新駅「羽沢横浜国大駅」の開業を控えて、相鉄、地域、大学、行政の連携でどのような取り組みが可能か。現在進行中のプロジェクトや今後の課題についてお話しいただいた。
 
国立大学の法人化によって、大学は独自の目標を定めて、自らをマネジメントし、運営努力をすることが求められるようになった。また同時に、地域連携と教育研究についても深く掘り下げる必要がある。横浜国大では、2001年に保土ケ谷区からの「商学交流事業」への参画の呼びかけに応じる形で、地域貢献まちづくりとして和田町商店街活性化に向け、「和田町べっぴんマーケット」、「和田町コモン」、「和田町駅前広場再生」など、さまざまな活動に取り組んできた。

和田町での経験を踏まえ、2020年に向けて相鉄線新駅「羽沢横浜国大駅」前でのまちづくり事業に取り組んでいる。横浜国大では11月24日に、「羽沢横浜国大駅開業を契機とした地域と大学のさらなる連携強化」と題した公開講座が行われ、11月30日の開業日当日には記念イベント「ハザコクフェスタ」にも参加する。ステージパフォーマンスやチョイモビ(電気自動車カーシェリング)の試乗・展示会、地元の生産者と横国大生によるマルシェなどが開催される。
さまざまな催しや取り組みを通して、羽沢エリアを活性化させ、新駅の価値をあげることは、地域住民や相鉄にとってはもちろん、横浜国大の大学運営においても、今後少子化・学生数の減少に対応するために重要な位置付けとなる。

本講義の後半では、昨年度の地域創造論グループワークで実際に羽沢駅周辺を対象に、地域の活性化について研究したグループのプレゼンテーションも聞くことができ、これから、のグループワークの進め方を考える際の参考になるお話だった。




2019年11月18日月曜日

2019.11.18

講師:
飛騨五木株式会社 企画研究室長
スミレ地域信託株式会社 常務取締役
井上博成 氏

〜2035年に当たり前に木材のある社会を目指して〜



岐阜県高山市に本拠地を置く飛騨五木株式会社(井上グループ)では、一般的に斜陽産業とみなされがちな森林産業をメインに据えたビジネスモデルを展開している。『自然資本から地域を変える』ことを目指し、グループ企業で連携する強みを生かして、林業、製材業、流通、設計、不動産、エネルギー開発…、と幅広く展開する事業について伺った。
 
井上氏は自身が高校生の頃から、地元高山への訪問動機が観光が中心であることを実感し、同時に、若い世代の移出と移入の少なさに問題意識を抱いていた。そのこともあって、当初から地域に根付いた環境系総合大学の設立を目標に掲げてきた。

井上グループでは、 ヒノキ、スギ、ケヤキ、クリ、ヒメコマツを飛騨五木としてブランディングし、森林資源としての魅力を広める。また、AEONグループとの連携で森ワクマーケット『森のワクワクの庭』を展開。47都道府県から集めた木に囲まれた施設に国産木材で作られた遊具を点在させ、子どもの心を育てる木育に取り組んでいる。開設から3ヶ月で5万人の集客を上げ、業界からの注目も高い。

井上氏は現在も京都大学大学院経済学研究科博士過程に在籍し、自然エネルギーと地域ファイナンスについて研究する。その専門性を発揮して、大学開設の資金として地域資源を活用した事業「飛騨高山小水力発電株式会社」も立ち上げた。

ものが溢れ、ライフサイクルの激しい時代において、地域を活性かするためには地域特性を差別化し、地場の産業を守ることが重要となる。森林資源によって、地域の付加価値を創造することを目指し、研究と実際の活動を常に行き来する井上氏の姿勢は、フィールドワークを取り入れた地域創造論においても、行動と理論を関連づけて考えることが重要であることを再認識させられるお話だった。