講師:
飛騨五木株式会社 企画研究室長
スミレ地域信託株式会社 常務取締役
井上博成 氏
〜2035年に当たり前に木材のある社会を目指して〜
岐阜県高山市に本拠地を置く飛騨五木株式会社(井上グループ)では、一般的に斜陽産業とみなされがちな森林産業をメインに据えたビジネスモデルを展開している。『自然資本から地域を変える』ことを目指し、グループ企業で連携する強みを生かして、林業、製材業、流通、設計、不動産、エネルギー開発…、と幅広く展開する事業について伺った。
井上氏は自身が高校生の頃から、地元高山への訪問動機が観光が中心であることを実感し、同時に、若い世代の移出と移入の少なさに問題意識を抱いていた。そのこともあって、当初から地域に根付いた環境系総合大学の設立を目標に掲げてきた。
井上グループでは、 ヒノキ、スギ、ケヤキ、クリ、ヒメコマツを飛騨五木としてブランディングし、森林資源としての魅力を広める。また、AEONグループとの連携で森ワクマーケット『森のワクワクの庭』を展開。47都道府県から集めた木に囲まれた施設に国産木材で作られた遊具を点在させ、子どもの心を育てる木育に取り組んでいる。開設から3ヶ月で5万人の集客を上げ、業界からの注目も高い。
井上氏は現在も京都大学大学院経済学研究科博士過程に在籍し、自然エネルギーと地域ファイナンスについて研究する。その専門性を発揮して、大学開設の資金として地域資源を活用した事業「飛騨高山小水力発電株式会社」も立ち上げた。
ものが溢れ、ライフサイクルの激しい時代において、地域を活性かするためには地域特性を差別化し、地場の産業を守ることが重要となる。森林資源によって、地域の付加価値を創造することを目指し、研究と実際の活動を常に行き来する井上氏の姿勢は、フィールドワークを取り入れた地域創造論においても、行動と理論を関連づけて考えることが重要であることを再認識させられるお話だった。
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