第8回の昨日は、横浜国立大学 都市イノベーション研究院 交通研究室の中村文彦先生に「地域空間のモビリティと持続性」というタイトルで講義していただきました。
自動車に依存しすぎることの問題や自動車を優遇しすぎた空間の問題として、温暖化の促進、大気汚染など、環境負荷の増加の問題はよく耳にするかもしれません。
しかし、その他にも交通事故の増加や、高齢化の移動困難者の増加、郊外化の促進など、都市問題も多く存在します。そのためにも自動車中心ではないまちづくりが必要になってきます。
世界では自動車指向から脱却した発想でまちづくりを行なっている場所もたくさんあります。専用道路を設け、公共交通であるバスのネットワーク化を促進し大量輸送を可能にしているクリチバや、外周道路沿いに駐車場を設け、中心地区ではトランジットモール化し歩行者と自動車を共存させているフライブルク。
ソウルでは、川の上にフタをして建てられた高速道路を撤去し、以前の川を復活させた清渓川の事例もあります。ここでは、撤去した高速道路分の交通量を処理するために、周辺の違法駐車の取り締まりを強化し、有効に使える車線を増やしたり、地下鉄やバスの整備を行い、公共交通の強化を図り、自動車交通量の問題を取り締まりや他の交通機関で対処して総合的に解決した点が特徴的です。
単に交通をどう処理するかではなく、そのまちをどのようにしたいかというビジョンを実現するために交通をどうするかという考え方が重要であるというお話がとても印象的でした。
LRTやコミュニティバスを導入したいという場合も導入自体が目的になってしまうことがあるそうです。そうではなく、LRTを導入することでまちをどうしたいのか、コミュニティバスを導入することで何を実現したいのかといったことを考えることで、わざわざ新しいものを導入しなくても、既存の交通機関のルートを変えることで解決できるかもしれないといったこともあります。
物事をどう変えていきたいのかという目的をきちんと見定めることの重要性を教えていただきました。