第9回の昨日は、横浜国立大学 国際社会科学研究科の大門正克先生に『「生存」のための地域復興をめざす ―歴史と現在―』というタイトルで講義していただきました。
ポスト3.11以降を考えるということで、大きなテーマとして、まず「生存」とは何かというを、大門先生は、人間が生きていく上で欠かせないものとして、「労働」と「生活」を両立させることを重要視しています。
実際に、3.11後の被災地では、雇用確保の困難や、教育・出産・育児といった生活の崩壊という現実があります。
今回は、歴史を振り返り、先人たちが「労働」と「生活」を実現する上でどのような取り組みを行なってきたのかを見ていくことで、現在の活動を歴史的経験と照らし合わせ、私たちの現在の足もとを映し出していきました。
戦後復興期の岩手県北上市和賀町は、農家の女性の過重労働や高い乳幼児死亡率とった問題をかかえていました。この地域では、地域の女性たちが立ち上がり、生活記録をつけ自らの生活を見つめなおし、自主性を喚起するといった取り組みをはじめ、労働時間と生活時間のバランスを意識し「いのちを守る農村婦人運動」が起こりました。そんな地域の活動に呼応するように役場も、国民健康保険直営診療所を開設したり、「母子衛生事業」母子保健センターも設置し、地域がかかえる問題を解決していきました。
一方、現在、宮城県石巻市雄勝では被災者となった子どもたちは、一方的に支援されるだけで何もできないことから心身不安定な状態という問題をかかえていました。雄勝では学校教育を見直し、学力養成から地域復興の担い手として育てることにシフトすることを考え、学校全体で仮設住宅の表札作りなど総合学習に取り組みました。子どもたちも何もできないのではなく地域の人たちの役に立っているということを実感させ、自尊感情を回復させることでかかえていた問題を解決していきました。最終的には、子どもたちはまちづくり協議会でプランを提案し、一部採用されるといったまさに地域復興の担い手として立派に成長していきました。
これらの事例では、地域住民の自主性や、役場やまちづくり協議会といった地域組織との連携、生活の再建など、共通するポイントがいくつもありました。
このように歴史をふまえることで、地域住民と地方自治体の役割や、「生活」と「労働」を両方視野に入れた「生存」の仕組みの特徴を意識でき、現在の地域の到達点・課題も明瞭に見えてきました。
各グループの提案にもこのような視点が入ることで、ブラッシュアップさせていけるのではないでしょうか。
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