みなさん、こんにちは。本日は2014年度の地域創造論、第06回目となります。
本日は、都市イノベーション研究院の稲垣景子先生による「神奈川県の被害予想と対策」の講義が行われました。
【ハザードと脆弱性】
防災について説明する稲垣先生(右奥) |
稲垣先生は、防災・減災の分野において、人的・物的な被害の大きさは、「被害=ハザード×脆弱性」と表すことができると言います。ここでいう「ハザード」とは、地震や台風、火山の噴火、洪水などの「被害のきっかけとなる外力」のことです。一方、「脆弱性」とは、建物の耐震・耐火性能の低さ、コミュニティの希薄さ、建物の密集と道路幅員の狭さなどの、「外力による影響の受けやすさ」をいいます。現在の技術力では、「ハザード」をコントロールすることは難しいため、主に「脆弱性」の方に対策の力点が置かれています。
【被害想定やハザードマップの見方】
そのような都市や地域の脆弱性を洗い出し、効果的な対策に役立てるために、行政機関から「被害想定」や「ハザードマップ」といった情報が提供されています。しかし、こういったものを活用する際には、いくつかの注意点をおさえなければなりません。
注意点の1つ目は、被害想定を算出する際には、必ず特定の「条件」に基づいて算出しているということです。つまり、例えば地震の被害想定についていえば、「県央部を震源とした、震度7クラスの地震が、冬の夕方に発生した場合、建物の倒壊は○○棟で、火災によって××件の建物が焼失します」というように、特定の震源、規模、季節、時刻にハザードが発生した場合のことについての情報が「被害想定」として算出されます。しかし、それゆえに、震源や規模などの条件が少しズレただけで、実際の被害状況は大きく異なります。
注意点の2つ目は、算出する際に使用する式はあくまでも過去の経験則にもとづいていて、さらに非常にザックリとした指標を使っているということです。実際に、現在公表されている被害想定は、阪神淡路大震災のときに、「1981年以降の建物は、震度XでY%倒壊し、それ以前の建物はZ%倒壊した」という実測データに基づいた「被害率曲線」に準拠して算出されています。しかし、これもまた想定を上回る災害が起これば、実際の被害は大きく変わってくることになります。
それゆえに、被害想定やハザードマップといったものを過信しすぎることなく、あくまでも「その地域の相対的な特徴を把握するための手段」として考えておいた方が賢明であると言えます。
【情報の活用】
質問をする参加者 |
そのように、被害想定やハザードマップの限界について理解したうえで、共助が働くコミュニティづくりや行政からの情報提供や避難指示を待たない、自主的な判断力の養成が必要となってきます。しかし、こういった点については、例えば、避難指示を呼びかけても避難率が向上しなかったり、あるいはハザードマップの情報を過信しすぎて、結果的に逃げ遅れてしまう人がいるということが、現実には課題となっています。それゆえに、もちろん防潮堤の建設や建物の耐震性の強化などのハード面での対策も必要となってきますが、それと同時に、「釜石の奇跡」で中学生たちが発揮したような自主的な判断力の習得や共助として一緒に避難することができるようなコミュニティづくりが必要となっています。
本日の内容は、以上となります。次回は、11月19日、都市イノベーション研究院の江口亨先生による「木造仮設住宅の可能性」についての講義が予定されています。
山川博彰
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