みなさん、こんにちは。本日は2014年度の地域創造論、第07回目となります。
本日は、都市イノベーション研究院の江口亨先生による「木造仮設住宅の可能性」の講義が行われました。その内容は、主に「みなし仮設と余剰ストックの有効活用」と「木造応急仮設住宅」の2本柱で構成されていました。
みなし仮設とは、被災世帯が入居する民間賃貸住宅を都道府県が借り上げ、一定額の家賃や共益費などを2年間負担する制度のことです。東日本大震災直後には約7万戸の仮設住宅が必要となりましたが、突然大量の需要に応えなければならなくなったために、用地の選定や資材の確保などに時間がかかり、結局3ヶ月経っても、2万5000戸しか確保できませんでした。この3ヶ月という時間は、実は非常に重要な意味を持っています。つまり、それだけの時間があれば、新築の戸建て住宅を建てられてしまうのです。また、仮設住宅は決して快適な居住環境を保証できるわけではないにもかかわらず、坪単価や家賃といった費用の面でもあまり優秀であるとは言えないという実態がありました。そこで注目されたのが、既存の空き家や空き室を利用したみなし仮設の制度でした。くわえて現在、日本には全国で約820万戸の空き家が存在しています。これはなんと、神奈川県の全世帯数(約397万世帯)の2倍以上の数字です。また、成熟社会に突入したことによって、新築住宅の着工件数も年々減少しつつあり、「建てる時代」からの構造転換を迫られています。それゆえに、平常時・非常時のどちらにおいても、空き家や空き室をうまく活用していくことが求められています。
説明を聞く参加者 |
【木造応急仮設住宅】
先程の話にも出てきた、(応急)仮設住宅とは、災害救助法にもとづき都道府県の発注により建設される住宅を指し、原則として災害発生後20日以内に着工し、着工後2ヶ月以内に完成することが法的に求められています。しかし、東日本大震災の際には、先程も述べたとおり、あまりにも大量の需要に応える必要に迫られたため、一般的な鉄骨系仮設住宅の供給が追いつかず、実際に約10%が木造で建設されました。こうした選択肢を増やすことは、災害に備えるにあたって是非とも考えるべきことであるため、現在その可能性の検証が行われています。実際に奈良県や熊本県では、地元の林業振興も兼ねた災害協定が結ばれていたため、木造の仮設住宅を供給したそうです。しかし一方で、資材調達や職人の確保といった課題があります。つまり、木材は基本的に、木を伐採してから自然乾燥しないと建材として使えないため、その分のタイムラグが大きく、また平常時には注文を受けてから伐採・加工作業に入り、在庫を用意していないため、非常時の緊急供給が難しいということです。くわえて、現在大工さんのなり手が減少していることに加え、とりわけ僻地といわれるような不便な場所で災害が起こった際には、職人さんがそこまで片道何時間もかけて通わなければならないということもあります。それゆえに、現在こうした課題を解消することが求められています。
本日の内容は、以上となります。今年度の授業の講義部分は本日で終了となり、次回からはグループワークのためのディスカッションや現地調査となります。次回は、12月03日、「これまでの成果概要報告とディスカッション」が予定されています。
山川博彰
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